2010年08月28日

数独ガール 3

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その頃、久美は一足先に教室に戻っていた。手にはもちろん数独の本を持っている。
「…やりすぎかなぁ」
久美は問題を見ながら呟いた。
そこへ、同じクラスの美館(よしだち)あかりが帰ってきた。
「あ、おかえり〜」
「ただい…、えっ? ええっ!? 久美、こんなところで何やってんの?」
「ほぇ? 数独」
「いや、そうじゃなくて! 始業式すっぽかしたの?」
「だって退屈じゃん。毎年同じことしかしないし。それより、これよこれ」
久美はそれまで見ていたページをあかりに見せた。
sudokuproblem.jpg
「これがどうしたのよ」
「いいから、解いてみてよ」
あかりは言われるがままに解き始めた。

程無くして、あかりの鉛筆が止まった。
「あれ、詰まった?」
「詰まった」
sudoku1.jpg
「そうそう、私もここで詰まったんだよね。そういうときはこのマスに注目よ」
そう言うと、久美は1つのマスを囲んだ。
sudoku2.jpg
「このマスは同じタテ列に3、6、7、9が、同じヨコ列に1、2、4、5、7があるでしょ?
同じ列に同じ数字は入れないよね。だからここに入れるのは8だけなの。
それから、ここかな」
そう言うと、久美は今度は盤面に線を引いた。
sudoku3.jpg
「こうやって見ると、左下のブロックで1が入るのは、このどっちか(水色のマス)だよね?
だから、右下のブロックでは、1は一番上の列には入れない。ついでに真ん中の列にも入れないから、1が入るのはこの場所(桃色のマス)に決まるの。
この問題では、あと何回か詰まるところがあるけど、こういう考え方を使えば最後まで解けるわ。
あーあ、何問も連続で解いてると、疲れてきて、こういう手筋もだんだん見えにくくなってきてねぇ…」
そのまま機関銃の如く話し続ける久美を、あかりは呆気にとられながら見ていた。
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2010年04月01日

数独ガール 挿絵

数独ガール1.png
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2010年02月12日

数独ガール 2

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久美は抜け出したことで厳重注意され、それ以来、少なくともこういう行事のときは突然いなくなることはない、はずであった。

しかし今日、それがまた起こってしまったのだ。
生真面目でまっすぐな真珠にとっては、許しがたいことであった。

***

結局、久美が戻ってこないまま始業式は終わった。真珠はすっきりしない顔で体育館を出た。

教室へ戻る途中だった。
「まーしゅーちゃんっ」
真珠は威勢のいい声とともに、後ろから背中をぽーんと叩かれた。振り返ると、同じクラスの萩生好香(はぎゅう・みか)がいた。
「ああ、好香…」
「どうしたの?顔に元気がないけど」
「うん、式の途中でちょっと…隣が気になって」
「あ、久美ちゃんのこと?そういえばいなかったような…
まあいいじゃない、前みたいに大変なことにはならなかったんだし」
「でも…」
「え?そんなに気にかけるなんて、まさか真珠ちゃん久美ちゃんとk」
「ちょっと!!変なこと想像しないのっ!」
「えへへ、冗談冗談」
好香はぺろりと舌を出した。
真珠は、好香のいいかげんな物言いに呆れながらも、気持ちが少し軽くなるのを感じた。
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2010年02月02日

数独ガール 1

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(まったく、もう…)
始業式の行われている体育館の中で、志緑路真珠(しりょくじ・ましゅ)はため息をついていた。ついさっきまでそこにいたはずの須藤久美(すどう・くみ)がいないのだ。行先はわかっている。そこは久美のお気に入りの場所で、突然いなくなった時は必ずそこにいる。
真珠は4年前のことを思い出していた。

***

久美が最初にいなくなったのはその年の入学式だった。いつの間にかいなくなり、名前を呼ばれたときに返事がなかったことでようやく周りの人は気付いた。新入生が消えた、ということでもちろん大騒ぎになり、担任団が学校中を走り回って探した結果、校庭の一番大きな桜の木の下で見つかったのであった。
そこで彼女が手にしていたものは…

数独の本であった。
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2010年01月18日

数独ガール 〜プロローグ〜

 よく晴れた春の日。
 校庭には桜が咲き乱れていた。

 その桜の木の下に、一人の少女がいた。この学校の生徒だろうか、制服を着ている。
 彼女は幹にもたれかかりながら、鉛筆を片手に小さな本とにらめっこしていた。
 本には、いくつかの数字が入った、9×9に区切られた盤面が書かれていた。
posted by pt at 14:19| Comment(0) | ブログ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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